007「黄金の銃を持つ男」~小説版


概要

イアンフレミング原作の「黄金の銃を持つ男」はシリーズ第13作目にして1965年に執筆されている

イアンフレミング長編作品の最後でもあり、本作を校正中に心臓麻痺で亡くなっている

映画はアジアが舞台となっているが、原作はジャマイカになっており

どこか哀愁すら感じる映画版スカラマンガと違い、癇癪持ちで極悪非道なキャラクターになっている

前「007は二度死ぬ」のラストで英国ではボンドは死亡したことになっており

実際記憶を失ったボンドは手がかりを求めソ連に向かうが

それが本作のとんでもない始まりにつながっていくのである

 

登場人物

フランシスコ・スカラマンガ

第三の乳首を持つ特異体質であり、カリブ海周辺で最も恐れられている殺し屋である

黄金の銃を所持し、銃を抜くスピードは世界一とも言われている

映画の黄金銃は所持品からの組み立て式であるが、原作では特にそういう仕掛けは登場しない

かつてサーカスで育った彼が大事にしていたマックスという象が暴れて

警察官に殺されてしまい、逆上して警察官を撃ち殺したことが彼の殺し屋のルーツだと思われる

 

メアリー・グッドナイト

ボンドの秘書であったが、ジェームズ・ボンド死亡説でカリブ支局に勤務することになった

ジャマイカでボンドに遭遇し喜びつつ、その任務をサポートすることになる

 

ヘンドリクス

建築中のサンダーバードホテルにてスカラマンガが開催した株主会議に出席した一人である

他の出席者はアメリカのギャング系である中、唯一のベルギー人である

大御所の空気感を漂わすこの男はいったい何者であろうか?

 

ニック・ニコルソン

サンダーバードホテルで支配人として働いているが

実はCIA局員でありスカラマンガ一味の会議の内容を収集しているのである

この男の助手であるトラヴィスも実はボンドの盟友であるフェリックス・ライターであった

 

 

ストーリー(ネタバレ有り)

前作にて日本で007ことジェームズ・ボンドが死亡したという記事が世に出てから

英国秘密情報部にジェームズ・ボンドを名乗る電話が頻発していた

電話口のウォーカー大佐はその男の内部の知識が正確なことに面食らっていた

なんとMの本名を知っているばかりか、その日の食堂のメニューまで把握していたのである

とりあえずこのジェームズ・ボンドを名乗る男はタウンゼント少佐と会うことになったのである

二重スパイであったフロイデンシュタットまで知っているこの男をタウンゼント少佐は

かつてジェームズ・ボンドであった男には間違いないが、何か様子がおかしいと報告した

 

Mと幕僚主任のビル・タナーはこのボンドらしき人物と会うべきか話合い

結果ボンドはMの部屋に招かれたが、赤ランプが頭上に光るドアから入室し、やはり何か変である

デスクを挟んでMと向き合ったボンドは記憶を失いソ連に向かったことを話して

そこでMがターゲットであると聞き、瞬時に黒い銃を取り出しMに向けて放ったのである

その瞬間、二人の間にガラスが降りて毒液は遮られたのであった

幕僚主任と保安主任がさっとボンドに体当たりすると、彼は意識を失った

ソ連がジェームズ・ボンドを洗脳したことに気付いたMは精神科医のサー・ジェームズ・モロニーの元で

ボンドの洗脳を治療させることにし、復帰してからの任務にスカラマンガとの対決を用意したのであった

 

カリブ海域で活動するスカラマンガを探すためボンドはジャマイカのキングストン空港にいた

ここからキューバに向かう予定であったが

たまたまチェックした旅客あての伝言コーナーでスカラマンガ宛の封筒を目にしたのだ

こっそりそれを持ってトイレに向かい、その内容を確認すると

その送り主がスカラマンガにサヴァンナ・ラ・マールにて何かのサンプルを渡すことが書かれていた

 

読み終わった封筒を元に戻し、ボンドは高等弁務官事務所のロス大佐に電話した

秘書は大佐が不在中であると言ったがボンドはこの女性の声に聞き覚えがあった

声の持ち主はメアリー・グッドナイトであり、以前ロンドンでボンドの秘書を務めていた女性だった

彼女はボンドが日本の任務で死亡したと聞き、この地での仕事を選んだようであった

ボンドは車を一台手配するよう伝え、サヴァンナ・ラ・マールのラブ小路3と1/2番地について調査するよう伝えた

彼女が手配した車はかつてストラングウェイズが乗っていたサンビーム・アルパインであり

スカラマンガがサンプル受取で現れるラブ小路の番地には売春宿があることが判明した

 

宿に向かいマネージャー的な仕事をしているというティフィと名乗る女性と話していると

階上からボンドの目的であるスカラマンガが降りてきた

この長身で凄みのある男はボンドを見かけると、警察関係の匂いがすると言い放った

そして不穏な空気に騒ぎ出した鳥に銃を向けるや否や、銃弾がその二羽を貫いたのである

お気に入りを殺されたティファは怒り、マザー・エドナの魔法で復讐してやるとボンドに言った

 

ボンドは警察関係の仕事を否定し、トランスワールド財団のマーク・ハザードと名乗り

西インド製糖のフローム農場でサトウキビ畑の警護をしていると言った

男もフランシスコ・スカラマンガと名乗り労働問題関係の仕事をしており

ここカリブ海域周辺では黄金の銃を持つ男と呼ばれていると言った

警備で銃を所持しているのが分かると、スカラマンガはボンドに千ドルの仕事をふってみた

これは標的に接近するいい機会だと考えたボンドはOKを出した

 

スカラマンガは建築中のサンダーバードホテルに投資していたが

アメリカとキューバの仲が悪化したことで計画が難航しているらしい

そこで投資者を集め会議を開く予定であるが、全員信頼できるとは限らないようである

そこでボンドに盗聴や何か怪しい動きや気配が無いか警備してもらうことにしたのだ

早速、スカラマンガの車に乗りこみ、その現場であるホテルへと向かった

車内で後部座席に座ったボンドは今ならスカラマンガを撃ち殺せると考えたが

無抵抗の人間を殺すことは彼のポリシーに反することにより、決着は先延ばしになった

 

スイスの資本を代表するヘンドリクス、デトロイトで不動産を営むサム・ビニオン、

マイアミの芸能関係であるルロイ・ジェンジェレラ、ラスベガスのホテル経営者ルビー・ロトコッフ

シカゴの労働関係のハル・ガーフィンクル、アリゾナのスロットを扱うルーイ・パラダイス

これらの出資者が会議に出席するようであったが、スカラマンガも完全には彼らの腹の内は分からないようだ

こうして続々とサンダーバードホテルに車が入り、会議の前にまず皆で食事をすることになった

 

スカラマンガは皆にボンドを助手のマーク・ハザードと紹介し

唯一のヨーロッパ人であるヘンドリクスと会話をしたボンドは

彼がソ連のKGBかマフィア関係であると考えた

それは他のアメリカ人も気付いていると思われるほど、強烈な組織の匂いがしたのであった

食事も終わり解散すると支配人がボンドに近づき、助手のトラヴィスが会いたがっていると言った

トラヴィスはボンドも昔から知っている激務を共にしたフェリックス・ライターであった

このピンカートン探偵社のアメリカ人のおかげでボンドは大きく勇気づけられたのである

 

翌日、会議室で会議が始まったが、ボンドはその扉の外側で護衛することになったが

扉にシャンパングラスを押し付け増幅器の要領で会議の内容を盗み聞きしようとしていた

フェリックス・ライターが言うにはここの支配人もニック・ニコルソンというCIA局員であり

会議の内容は盗聴できるように段取りされているらしく、最悪ボンドが聞き逃してもどうにかなるようである

 

会議では最初にヘンドリクスがジェームズ・ボンドという英国秘密情報部員がここいらを嗅ぎまわっていると言った

それからビジネスの話に移行し、ホテル投資から今後は降りると反対案を出したルビー・ロトコッフが

スカラマンガの黄金銃で始末されたようであった

他の出席者は扉の外のマーク・ハザードというイギリス人がその銃声を聞いていることを心配したが

彼はマリファナを受け取りに行った売春宿でたまたま雇っただけであり

用が無くなり次第、始末するので大丈夫であるとスカラマンガは小声で言った

 

カリプソ・バンドの演奏付きディナーでボンドはスカラマンガに何か場を盛り上げるように指示された

本来、無能なイギリス野郎を演じるべきだがボンドはこの挑戦に熱くなり

華麗な拳銃さばきを披露したのであった

ディナーの場は盛り上がりを見せたが、明らかにスカラマンガとヘンドリクスの見る目が変わっていた

部屋に戻ると拳銃の腕前を見せてしまったことを後悔しつつボンドは眠りについた

 

夜中、物音で目覚めるとメアリー・グッドナイトが部屋にいた

彼女はヘンドリクスというKGBの大物がボンドを探しにジャマイカへ来ており

ジェームズ・ボンド殺害までがその任務であるという情報を伝えに来たのであった

だがボンドとスカラマンガの部屋は衣装戸棚で繋がっており、ボンドの部屋にのみ入れる仕様になっていて

いつの間にか部屋に侵入したスカラマンガに聞かれていたようであった

メアリー・グッドナイトはマーク・ハザードの妻であり、母親が入院したことを伝えにきたと

その場を取り繕ったが

スカラマンガのこのイギリス人への疑惑は頂点に達したのであった

あの拳銃さばきといい、この男こそヘンドリクスの言うジェームズ・ボンドであると

 

翌日の会議でボンドの詳細な書類を入手したヘンドリクスは

例のイギリス人は間違いなく英国秘密情報部のジェームズ・ボンドであると言い

この会議終了後に彼を始末することが決定した

 

スカラマンガとギャング一同は助手のマーク・ハザードを乗せ汽車に乗りこんだ

グリーン・アイランド・ハーバーに向かう途中、銃による狩りも楽しめるというが

その実態は用が無くなった助手のイギリス人の始末であった

汽車が進むと線路上に人のようなものが見えて、それはメアリー・グッドナイトだとスカラマンガは言った

同時にボンドは銃で狙われ、上手くかわしたがメアリーが汽車に轢かれてしまうのは防げなかった

 

線路上でばらばらになったのはマネキンであったのを確認すると

汽車の後部に隠れていたフェリックス・ライターが応援に入った

ヘンドリクスとスカラマンガに銃弾がヒットし一気に形勢は有利になり

機関士を失った汽車からボンドとライターは飛び降りた

コントロールを失った汽車は炎に包まれ川に落下したが

ボンドは直前にスカラマンガが脱出したのを確認したのであった

 

マングローブの根元で伸びていたスカラマンガには確かにボンドの弾が当たっていたが

致命傷にはなっていなかったようだ

ボアという蛇を冷静にナイフで殺すスカラマンガを見て、ボンドはまだ油断は出来ないと肝に銘じて近づいた

イギリス紳士は詰めが甘く殺せないと挑発するが、

ボンドが銃を構えるとスカラマンガは動揺し最後の祈りを求めたのである

その手は徐々に後頭部に向かい、隠された黄金銃でボンドに発砲するが

ボンドの拳銃も火を噴き、この大男は息を引き取ったのであった

 

この大仕事を成功させたジェームズ・ボンドは女王陛下からナイトの称号を与えられることになったが

ボンドはこれを丁重に断り、なんと辞退したのであった

007ことジェームズ・ボンドはスリル溢れる仕事には興味あれど

無駄に長い肩書や常に人目を気にしなければならない生活など考えるだけで苦痛であった

そう、彼は自身のプライバシーにはこだわり

なによりも自由というものを愛していたのである

 

 

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