「女王陛下の007」~小説版


概要

イアンフレミング原作の「女王陛下の007」は1963年にシリーズ第11作目として執筆された

前「サンダーボール作戦」に続くブロフェルド率いるスペクター編であり

ジェームズ・ボンドが本気で結婚してしまうという内容は映画と同様である

序盤は女は仕事の邪魔になると考えていたボンドが

徐々にトレイシーに心奪われていくあたりが見どころの一つになっている

 

登場人物

エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド

スペクターの首領であり「サンダーボール作戦」では核兵器による世界恐喝を007により阻止された

だがNo.1であるこの男はまだ生きており、スイスにいるという情報を入手した

どうやら彼は伯爵という地位を得ようとしているようである

 

イルマ・ブント

ブロフェルドの秘書であり、嫁という設定である

ブロフェルドのアレルギー実験の被験者を見張る看守的なこともしている

 

マルク=アンジュ・ドラコ(カピュー)

ユニオン・コルスの首領であり、トレイシーの父親である

じゃじゃ馬で情緒不安定な娘を心配し、ボンドを男の中の男と見込んで彼女と結婚するよう頼み込む

どうやら彼はスペクター及びブロフェルドの消息について多少知っている様子である

 

テレサ・ディ・ヴィチェンツォ(トレイシー)

ドラコの娘であるが向こう見ずな性格で父親も手をこまねいているようである

白のランチア・スパイダーでボンドのコンチネンタル・ベントレーを追い抜き

カーチェイスとなるが、そのまま振り切り姿を消してしまう

これに惚れ込んだボンドは感を頼りにロワイヤル・レゾーに向かい、彼女と遭遇した

イタリア人の伯爵と結婚するが離婚し、残った子供も死亡するという悲しい過去を持つ

 

メアリー・グッドナイト

映画「黄金銃を持つ男」でも登場するボンドの秘書であり

元海軍婦人部隊員という経歴を持つ

前任のローリア・ポンソンビーはとある金持ちと結婚退職し、本作からはこのメアリーが登場する

 

セイブル・バシリスク

紋章院という家系を調査、管理する機関に勤める紋章官である

公務員秘密保護法違反ではあるが、ブロフェルドの情報を与えて

ボンドにサー・ヒラリー・プレイという紋章官になりすまし接近するアイディアを出す

どうやらこの紋章官の名前は実在したようである

 

ストーリー(ネタバレ有り)

007ことジェームズ・ボンドとトレイシーはいかにも悪党な面構えの二人組とボートに乗っていた

話をさかのぼるとベントレーを運転していたボンドは美人が運転するランチアに追い抜かれ

カーチェイスになるが狭い道もあってか追いつけず、その車を見失ってしまった

車の運転が得意な女性が好きなボンドはこれが気にかかり、山勘でロワイヤルレゾーに向かった

 

そこのカジノで彼女を再び目撃するが、なんとから賭けをして負けてしまったのだ

金を所持しないで賭けに出る行為には過酷な処遇が待っており

フランス界隈だけでなく各地のカジノで出禁になる汚名が待っているのである

場の空気が張り詰める中、ボンドは彼女の知り合いと名乗り出てこの負債を背負ったのであった

その夜、ボンドは彼女の部屋に招待され、助けられたお礼に情事となるが

トレイシーと名乗るこの女性は輝く何かを持ちながらも

精神的にはかなり病んでおり一筋縄ではいかないようであった

 

後日、ロワイヤル・レゾーの海岸で彼女が海に身を投げようとして救いに向かったボンドに

二人組が銃を突きつけてこの四人でボートに乗っているという状況が生まれたのであった

ロワイヤル川をさかのぼるボートは桟橋に着き、そこの頭株らしき人物と会った

このユーモアと茶目っ気あふれる人物はマルク=アンジュ・ドラコと名乗り

フランスでも一大勢力となるユニオン・コルスという犯罪組織の首領だというのだ

彼は英国情報員のジェームズ・ボンドを知っており、娘と結婚して欲しいと言った

なんとその一人娘はトレイシーであり、今回のカジノで娘を助けた件で男として見込んでの願いであった

 

ドラコはボンドが結婚に踏み切ったら謝礼の金も用意するし、出来る範囲でなんでもすると言った

ふとその時ボンドは閃き、スペクターNo.1であるブロフェルドの情報を聞いてみた

サンダーボール作戦から音沙汰無いブロフェルドであったが

Mは長年の勘から彼がまだ生きており、何か画策していると考えていた

そして、その任務をボンドに与え続けていたのであった

ドラコもブロフェルドのことはよく知っており、調査の結果スイスにいるようであった

 

ロンドンに戻ったボンドは新しい秘書のメアリー・グッドナイトに会うと

ブロフェルドについての新たな情報を紋章院が掴んだらしく、そこに向かうことになった

紋章院のセイブル・バシリスクはブロフェルドがバルタザール・ド・ブルーヴィル伯爵の

正当の嗣子を名乗り、紋章院にその申請を出しているとボンドに言った

これはボンドにとってまたとないチャンスであり、サー・ヒラリー・ブレイという紋章官になりすまし

ブロフェルドに接触することに成功したのだ

勿論、表向きは伯爵の家系であることの事実確認のためである

 

チューリッヒ空港に着いたボンドはブロフェルドの助手であるイルマ・ブントと出会った

彼女はヘリコプターを用意しており、そこからはヘリで向かった

ヘリはアルプスの雪で覆われた峰に降り立ち、看板にはグロリア倶楽部と書かれていた

ここにはロープウェイが敷かれており、バーや食堂や寝室も兼ね備えスキーヤーで賑わっていた

また別館の方は伯爵が生理学の研究のために使用しているという

 

バーに向かうとイルマ・ブントはイギリスの娘たちを紹介した

伯爵のアレルギー実験の被験者であるが、規則により本名を名乗らないことになっていた

彼女達はチキンやジャガイモを旨そうに食べていたが、ここに来る以前はそれらが苦手だったらしい

伯爵の実験の成果でこれらの苦手なものを克服したのであろう

部屋は内側から開かなくなっており、眠りについたボンドは遠くからささやき声が聞こえた気がした

 

翌日、ボンドはサー・ヒラリー・ブレイとしてブロフェルドと会うことになった

目の前に現れたブロフェルドは記録に乗っていた容貌とは打って変わり

ブルーヴィル家の特徴である耳たぶも無かった

巧妙に外見を変えながらもボンドはこの目の前の男がブロフェルド本人であると確信した

ボンドは伯爵の血筋を認めつつも

最終確認として一族のルーツであるアウグスブルクに同行願うように言った

 

ボンドが部屋で仕事をしていると患者の一人であるルビーが現れた

自分の家系も調査して欲しいというのだ

そして元々鶏アレルギーであり、新聞の広告で治療できると見かけてここに来たと言った

彼女は部屋にはマイクかなにか仕掛けられており、浴室がその死角になっていることも伝えた

ボンドはその家系を調べて夜中に彼女の部屋に行くことを約束した

 

その夜途中でくすねたプラスチック板を使って鍵を外し、ボンドはルビーの部屋に向かい

ルビーの家系であるウィンザーという名前は特に名家とは関係ないと伝えた

その時、メトロノームのような音とともに鶏が好きになるような言葉が繰り返され、ルビーは眠りに落ちてしまった

ボンドはこの治療法は深層催眠であると考え、これで彼女の鶏嫌いも克服されるであろう

 

翌日、ブロフェルドに伯爵についての尋問をするボンドの前に血にまみれた男が現れた

用心棒に連れられた男は秘密情報部のZ支局のキャンベルという男であり

ボンドを見るなりジェームズ・ボンドの名前を出してしまったのである

ボンドはこれをしらばっくれたが、ブロフェルドの疑惑は消えなかった

その場は収まったが、これからキャンベルには口を割らすための拷問が待っており

彼が口を割るにしろ、そうでなくてもボンドはこの場から逃げるしか道は無いと考えたのである

 

必要なものをかき集め、ルビーに患者全員の名前と住所を聞きボンドは脱出に備えた

その夜、部屋を脱出したボンドは用心棒を倒し、スキー板を装着し表に出た

用心棒の無線からボンドの部屋に乗り込むよう指示が流れ

自身の決断が正しかったことを改めて感じたボンドであった

しばらくすると追っ手が現れ、弾丸がボンドの脇をかすめてくる

敵は雪崩を起こして息の根を止めようとするが、これらを逃げ切ってボンドはスケート場に着いた

そこにはなんとトレイシーがおり、彼女の車に乗りこみ完全に敵の追跡を撒くことに成功したのである

 

チューリッヒ空港に向かう車内で疲れ切ったボンドは眠っていた

空港で一通りの連絡を終えたボンドはトレイシーに愛の言葉を伝え、本気で結婚を申し出た

真剣にいい組み合わせだと思ったし、トレイシーもこれに心から喜んだ

ボンドはまだ仕事が残っていることを伝え、彼女にミュンヘンで待ってもらうことにし

自身は一度ロンドンに戻ったのであった

 

Mとボンドはレザーズという科学者とフランクリンという農林水産省の人間と会っていた

ブロフェルドの善意にも見て取れる催眠療法について話していたのである

ボンドが入手した患者のデータを見たフランクリンは何かに気付き語りだした

それは細菌兵器であり、ウィルスを本人にはそれと知らせずにまき散らすよう暗示されて

彼女達はイギリスの各地に戻ってくるようであった

最近ブロフェルドの治療を終え、戻った娘の地元で七面鳥のペストが猛威を振るったのもそれが原因だと

今回、戻ってくる10人も牛、鶏、豚、ジャガイモの一大産地に帰る予定であり

これらにも有名な疫病が存在している

大参事を避けるためやらなければならないことはチューリッヒ空港から向かってくる彼女らを捕まえることであった

 

スイスのピズ・グロリアに赤十字のマークの付いたヘリコプターが向かっていた

イタリアに血清を運ぶという名目の機内にはボンドとマルク=アンジュとその部下が乗りこんでいた

ブロフェルドのアジトに到着し、連邦アルプス警察というありもしない名を出すと

一人ボブスレーの方へ逃げる姿を発見した

それは紛れもなくブロフェルド本人であり、ボンドもボブスレーに乗り込み追跡した

前方から黒いレモンのようなものが現れ、気付いた時にはすでに手遅れでボンドはそこに倒れていた

ブロフェルドが手榴弾を投げたのであった

山の上でも爆発がありドラコ一味がアジトの破壊に成功した様子であった

だが肝心のブロフェルドとイルマ・ブントの行方は謎に包まれ、どこかに逃亡したと考えるのが妥当であった

 

ブロフェルドの患者はチューリッヒ空港で隔離され、英国の大がかりな細菌感染は阻止され

ボンドとトレイシーはイギリス総領事館で結婚式を挙げていた

式を終えた二人は白いランチアに乗り込み走り出した

クフシュタインに向かう道の車もまばらになり、後方に赤いマセラッティが見えるくらいである

その車が飛ばしてきて、ボンドは先に行かせようと合図をすると事件は起きたのであった

マセラッティからブロフェルドらしき顔が現れ、サイレンサー付きの銃が見えたのであった

ランチアのフロントガラスが消え、脇にそれた車体でボンドは意識を取り戻した

そして運転席のハンドルに突っ伏し動かなくなったトレイシーを抱き寄せパトロールの警官に言った

「大丈夫だ。ちょっと休んでるだけだ。われわれには暇はいくらでもあるんだものね」と

 

 

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