007「ドクター・ノオ」~小説版


概要

イアンフレミング原作の「ドクター・ノオ」は1958年にシリーズ第6作目として登場している

映画版では記念すべき第一作目であり、スペクターの名前も登場し

ノオ博士もスペクターの一員となっているが、小説ではソ連の一味になっている

これまで愛用していたベレッタが実用的でないとのことで

ワルサーPPKやスミス&ウェッソンをブースロイド少佐から薦められるのも本作である

 

登場人物

ストラングウェイズ

「死ぬのは奴らだ」でも登場した秘密情報部カリブ海域主任である

今回このストラングウェイズと秘書のトルーブラッドが同時に音信不通になり物語は始まる

そして、その後釜で派遣されるのが007ことジェームズ・ボンドなのだ

 

クォーレル

同じく「死ぬのは奴らだ」で活躍したジャマイカの漁師である

現地に向かったボンドはまずこの旧友に会うことになった

 

ハニーチャイル・ライダー

クラブ島でボンドが出会った女性であり、貴重な貝殻を採取し生計を立てている

非常に美しいが鼻がつぶれてひん曲がっており

マンターという農園の監督をしていた白人の男に襲われたときに殴られたようである

だが彼女は仕返しで黒後家蜘蛛を寝床に放ち、この男は苦しみながら死んでいったのだ

金を貯めて、鼻を直してアメリカでコールガールになるのが夢であるという

たまたまボンドと出会ったばかりに壮絶な運命に身を委ねることになるのである

 

ジュリアス・ノオ博士

ドイツ人のメソジスト派宣教師と中国の良家の娘から生まれ、上海で党という非合法組織に入る

ニューヨークに渡り派閥争いで両腕を失い、心臓が右側にあるという特異体質で生き延びた

そこから義手の生活になるが、力というものに執着し研究を重ねたという

そうして現在のアジトであるクラブ島を買い取り、グアノ採掘で財を成したのである

だがこの島にはそれ以外にも秘密が隠されているとノオ博士は言う

 

アナベル・張(チャン)

自称グリーナー新聞社のフリーカメラマンであるという中国系ジャマイカ人である

どうやらノオ博士の手下であるようであり

なにかとボンドの写真を撮ってくるのである

 

ミス・タロー

総督府の役人プレイデル=スミスの秘書である中国系ジャマイカ人である

今回ボンドのジャマイカ出張は何かと情報が筒抜けな感じであるが

この総督府、具体的にこのミス・タローの不審な挙動にボンドは目を付けたのである

 

ストーリー(ネタバレ有り)

前任務でローザ・クレッブの靴先ナイフで毒が体内に入ってしまった007は命は取りとめたが

しばらくの入院生活を送っていた

Mは専属の精神科医であるサー・ジェームズ・モロニーと話し

ジェームズ・ボンドにも休息が必要であるという結論に至った

Mはボンドを呼び出しジャマイカでの任務を与えて、そこでゆっくりするように言ったのである

前任者のカリブ海域主任であるストラングウェイズは秘書のトルーブラッドと行方不明になり

その真相を探りつつ、彼のポジションを引き継いで行くことになったのである

そして、前回の任務失敗の原因であるベレッタの使用を禁止して

ブースロイド少佐お墨付きのワルサーPPKとスミス&ウェッソンを携帯する銃としてボンドに渡したのである

 

ジャマイカでまずボンドが出会ったのはミスター・ビッグとかつて共に戦ったクォーレルであった

空港にてカメラマン女性に写真を撮られ、さらに車にも尾行の存在を確認し

早くもなにかしらの情報が洩れているのを感じたボンドだが

ひとまず宿泊先のブルー・ヒルズ・ホテルに到着した

その夜、夕食にジョイ・ボートというナイトクラブに向かった二人はまたしても写真を撮られ

どうやら彼女はグリーナー新聞社のフリーカメラマンであり、アナベル・張という中国系ジャマイカ人であるようだ

クォレルは彼女を捕まえ腕を締め上げるが、口を割ることは無く

従業員でクォーレルの友人でもある「タコ切り」という男に調べさせたが、彼女の発言の裏が取れたのであった

ひとまずアナベル・張の身柄を放したが、ボンドはそこに強い組織力を感じたのであった

 

次にボンドが向かったのは総督府であり

総督は事なかれ主義で今回の件はストラングウェイズの恋の駆け落ちという結果にしたいようであった

次に副総督のプレーデル=スミスに会いボンドはクラブ島とそこを占拠するドクター・ノオ博士について聞いてみた

失踪する前のストラングウェイズが丁度ここを調査していたからである

島ではグアノという資源が採掘され、それに目を付けた中国人のノオ博士がここを買い占め

ベニヘラサギという絶滅危惧種を守るオーデュポン協会と対立していたようであった

クラブ島の禁猟区の監視員が火を噴く竜のようなものに殺されてしまったのが原因であった

秘書に詳しい書類を求めるスミスであったが、ミス・タローは中身が見当たらないと答えたのであった

 

ホテルに戻ると総督副官室の黒人が果物籠を届けにきたとフロント係りはボンドに伝えた

部屋に戻り、日課でもあるチェックをすると何者かが部屋を捜索した形跡があった

さらに届けられた果物もよく見ると小さな針の穴があいており、周囲がかすかに変色していた

これでボンドはジャマイカに来てからの情報漏れについて確信を得たのである

毒入り果物を持ってきたのはプレイデル=スミスの秘書であるミス・タローであり

この中国系ジャマイカ女性はノオ博士に通じていたのであった

ボンドが今回ここに来ることも総督府には連絡していたので、すべては博士に筒抜けだったのだ

 

その夜、ボンドは違和感を感じて目を覚ました

なんと大型ムカデが体を這っていたのだが、これをなんとか振り払い危機を脱することが出来た

間違いなく相手は探りを入れているボンドを目ざわりに思い、始末したいようである

クラブ島を同じように探っていたストラングウェイズも秘書と一緒にノオ博士によって殺されたのであろう

 

クラブ島に向かったものは決して戻ってこれないと恐れられていたが

ボンドとクォーレルはその島の実態を掴むため、目立たない夜にカヌーを島へと発進させたのである

クラブ島に到着し、朝方になるとボンドは裸に近い女性を目撃した

彼女はハニーチャイル・ライダーと名乗り、本土からこの島に珍しい貝を収集しに来ているらしく

その貝を売ることにより生計を立てているのであった

残念なことにその鼻が潰れていたが、全体としては美人であった

 

突如、沿岸から島を警備するクルーザーのような音が聞こえ、三人は茂みに身を隠した

そこには機関銃が搭載されており、スピーカーでの警告が聞こえてきた

改造された魚雷艇の乗組員の黒人は機関銃で周囲に発砲し

犬を引き連れ再び戻ってくるとスピーカーから叫び、視界から消え去ったのだ

ボンド、クォーレル、ライダーの三人はもっと島の内部に向かい

犬の嗅覚から逃れるため水中に潜り、切り取った竹を使い呼吸することにした

たまたまボンドの近くまで来た警備を殺さなくてはならなかったが

この作戦は上手くいき、犬による捜索から逃げ切ったのであった

 

オーデュポン協会の監視員が生活していた辺りに着くと、火を噴く竜のような存在に遭遇した

それはよく見るとトラクターのようなものに火炎放射器を付け、竜のような装飾がなされていた

ボンドはスミス&ウェッソンでこれに立ち向かうが

相方のクォーレルはこの火炎放射器の炎が直撃し、やられてしまったのであった

結局、ボンドとライダーは手錠をかけられ、この竜のような乗り物に乗せられてしまった

ボンドがノオ博士の名前を出すと黒人達の態度が変わったように見え

二人はさらに奥にある博士のアジトへと連れて行かれるのであった

 

周りの採掘現場のような雰囲気と違い、その内部はまるで大企業のような作りであった

ボンドとハニーチャイル・ライダーを待ち受けていたのは

シスター・リリーとシスター・ローズという角縁眼鏡の有能そうな中国娘であった

ボンドは鳥類学者のジョン・ブライスと名乗り、ライダーもその妻という設定で紹介すると

二人は華麗な内装を持つ部屋に招待されるが

そこは窓もドアの内側の把手も無い、実質的には監獄のような部屋であった

 

夕食時、ボンドとライダーは壁の一面が海に面する強化ガラスでできた部屋に博士に招待された

この長身で両手が鋼鉄の義手であるノオ博士は「英国秘密情報部ジェームズ・ボンド君」と言った

鳥類学者ブライスという偽名を一瞬で見破った博士は自己紹介をした

 

ドイツと中国のハーフである博士は上海で党という犯罪組織に入り、ニューヨークで組織の会計係りを務めた

だが二つの党で抗争があり、そのごたごたで金庫の金を持ち逃げしたが

結局見つかり、両手を落とされたうえに心臓を撃たれてしまったようである

だが心臓が右にあるという特異体質で助かった博士は

金を切手に替えて、世の中に対する力と人間の肉体と精神について研究に研究を重ね

このグアノが採掘できるクラブ島を買い取り、自分の理想とする城を作りあげたようだった

 

だがベニヘラサギという鳥が絶滅危惧種の存在で島にはオーデュポン協会が進出しており

このベニヘラサギという鳥が臆病であるのを利用して竜のような乗り物を作り、監視員も殺害したのであった

結果、人を呼んでしまうベニヘラサギは結果居なくなり

グアノを生み出すグアノ鳥さえ島にいれば博士の城は成り立つのであった

またこのグアノ採掘の裏にはもっと壮大なプランがあり

ここにはアメリカが発射したロケットの軌道に手を加える装置があり

そのビジネスパートナーとしてソ連の名が挙がったのであった

 

この後、ハニーチャイル・ライダーは人を食う獰猛な黒蟹が多数現れる所に縛られる運命になっており

ボンドにはノオ博士が作り上げたという「死に向かって突進するレース」が待ち受けていた

ボンドはとある部屋に閉じ込められ、脱出可能なポイントとしては換気口だけであった

そこを塞ぐ網を取り、その網を槍状に加工しボンドはシャフト内に突入した

シャフトは横にも縦にも進んでおり、途中高熱に襲われる場所やタランチュラの集団が仕掛けられていたが

夕食時に博士の目を盗んで忍ばせていたライターとナイフと先ほど加工した網の槍を使い内部を進んだ

だがその終着は海に落下するようにできており、ボンドも見事に落下していった

 

その海の周囲は網の柵で囲われ、ボンドはここに何者かが潜んでいると予想した

そいつはノルウェー沖に現れるという伝説のクラーケンと呼ばれる巨大イカであった

ボンドは満身創痍であったが、捨て身の一撃を目玉に槍ごと突撃してこの危機を逃れたのだった

島は巨大タンカーに採掘したグアノを積み込みする日であり、ノオ博士も立ち合い人としてその場にいた

現場に向かったボンドはまずクレーンの操縦士を倒し

滝のように落下するグアノの粉末をノオ博士の方へクレーンを操作した

これが上手く成功し博士はあっという間に大量の粉末の下敷きになっていった

 

あとは島のどこかで黒蟹に襲われているライダーを救出し脱出するのみだが

向こうからボンドにぶつかってきたのが彼女であった

黒蟹の大群からどう切り抜けたか疑問を持ったボンドにライダーは説明した

黒蟹は人間を襲わないらしく、その蟹が人を食い殺すのはノオ博士の思い込みだったようである

二人は車庫にあった竜の形をした車に乗りこんで、追っ手を撒き無事に脱出成功したのであった

 

事件が一段落してボンドはハニーチャイル・ライダーの家に向かった

今回Mに休息がてら引き受けた任務も蓋を開ければ大事件につながっており

ここにきてようやくボンドは休息らしい南国の甘いひと時を堪能できるのであった

 
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