007「ダイヤモンドは永遠に」~小説版


概要

イアンフレミング原作「ダイヤモンドは永遠に」は1956年にシリーズ第四作目として登場した

映画版ではブロフェルド率いるスペクターの壮大な陰謀まで飛躍するが

小説ではまだスペクターの存在すら出来上がっておらず

アメリカのギャングとABCと呼ばれる黒幕がいかにしてダイヤモンドを密輸し

その運び屋に扮した007が内部から情報を掴み、追い詰めていくという内容になっている

 

登場人物

ピーター・フランクス

今回、ティファニー・ケイスに会いイギリスからアメリカにダイヤモンドを密輸する予定の男である

普段は夜盗などを専門とし、見た目はボンドに似た感じであるという

そこで彼を関税法違反で捕まえて、ボンドはこのフランクスに成りきり内部捜査することになった

ティファニーもフランクスの人相は知らされてはいるが、実際には会っていないのである

 

ティファニー・ケース

黒幕ABCから直に連絡を受け、ダイヤモンド密輸の監視及び立ち合いを担当する

母親が有名な売春宿を取り仕切っていたが、地まわりにみかじめ料を支払うのを拒否して

娘であるティファニーが強姦されてしまったのである

そこから男性不信と自暴自棄な生活が始まり、各地で悪さを働き生活をしていた

リノでギャングの首領セラフィモ・スパングと出会ってからは

スパング団として活動し、今回ダイヤモンドの密輸の件でボンドと会うことになった

ティファニーはピーター・フランクスと面識が無かったため、ボンドはこの成りすまし作戦に成功したのだ

映画ではティファニーの前で産まれたという理由であったが

小説では子供が男でないことに怒った父親が

千ドルとティファニー製の白粉ケイスを残して出て行ったことによるようだ

 

 

ルーファス・B・セイ

イギリスのダイヤモンド館の副社長である

書類上では白の人間であるが、謎も多くボンドと部長刑事は本人と会い話を伺う機会を得た

会話に鎌をかけた部長刑事はこの男を益々疑うのであった

何故なら部長刑事が会話の途中に織り交ぜたダイヤモンドの種類は実在しないはずだが

ルーファス・B・セイはその件についてなにも否定しなかったからである

後の調査によりこの男がスパングルド団のジャック・スパングと同一人物であると判明した

 

セラフィモ・スパング

ジャック・スパングの双子の兄弟でありラスベガスを拠点とするスパングルド団の首領である

その活動はカジノ、競馬、ダイヤモンドの密輸など多岐にわたっている

廃墟の街を丸々買い取り、西部劇さながらのスペクターヴィルという街を持っている

 

日かげのトリー

本名をマイケル・トリーというが日かげのトリーと呼ばれている

スパングルド団でも重要人物であり、ボンドが密輸したダイヤの受取人となっている

仕事に対する報酬に足がつくのを嫌い

いかさま競馬やカジノのいかさまという方法でボンドに金が入るよう仕向けている

 

Mr.ウィント Mr.キッド

スパングルド団の暗殺者として活動する二人組である

飛行機が苦手という弱点がありながらも、密輸されるダイヤの監視役も兼ねている

太った青白いほうがウィンター、若く見えるのに白髪の方がキッターリッジといい

通称Mr.ウィント、キッドと呼ばれている

 

ティンガリング・ベル

スパングルド団の息がかかっている競馬騎手である

「はにかみ」という期待されていない馬で出馬するが

本物の馬は殺され、高スペックの馬にすり替えられていたのである

これはスパングルド団が大穴で稼ぐためのいかさまなのだ

 

ストーリー(ネタバレ有り)

英国秘密情報部のトップであるMは007ことジェームズ・ボンドにダイヤモンドにまつわる話をしていた

今回、ダイヤモンドに関する仕事をボンドに任せるつもりなのだ

世界的にダイヤモンドの密輸は問題になっているが

そのダイヤが今ロンドンに入ってきており、これからアメリカに飛びたとうとしているという

その密輸実行犯はピーター・フランクスといい、組織の中でも末端である

フランクスを捕まえるのは簡単であるが、結局末端の人間がまた代わるだけである

Mが狙うのは当然組織のボスであり

このフランクスが予定している密輸の実行犯をボンドにやらせて、組織の内部を調査するよう命じたのである

入手した写真によるとフランクスとボンドは容姿が似ており、本物は別件で逮捕するようである

 

ボンドは今回の密輸の指示役であるティファニー・ケイスの滞在先に向かった

フランクスとティファニーは実際あったことが無かったため、そのまま仕事の話になる

やり口はゴルフボールの中にダイヤモンドを入れることにした

彼女も飛行機には同行するが、アメリカに着いたら日かげのトリーという男にダイヤを渡すよう指示した

そんな中、「枯葉」を物憂げに聞くティファニーの不思議な魅力にボンドは引き寄せられ

密輸が無事成功したら、アメリカの方で食事に行く約束を提案したのであった

 

アメリカに着き税関をくぐり抜けたボンドは迎えの車に乗せられ、日かげのトリーと会った

トリーは赤毛のせむし男であり、どうやら密輸を成功させたボンドを買っているようである

ボンドが密輸の報酬を求めると、以前の借りを返すという名目で千ドル渡し

サラトガで開催される競馬のあるレースでその千ドルを「はにかみ」という馬に賭けてみろと言った

これで報酬である五千ドルを超える額が手に入るというのであった

金の動きに足を残さないトリーにボンドは関心しつつ、その競馬にはなにかしらのいかさまがあるのだと考えた

またボンドの任務は組織の上部まで食い込むことであり、この繋がりはラッキーであった

 

街に出たボンドは背中に銃のようなものを突き付けられ、振り返るとフェリックス・ライターがいた

随分物騒な登場であるがこれも彼ならではのジョークなのである

ライターもスパングルド一味を追っているらしく、サラトガの競馬にターゲットを絞っているようだ

さらには「はにかみ」という馬を追っているらしく

彼の言い分では本物の馬はもう殺され、実力のある偽物にすでに入れ替わっているだろうと

これがライターとボンドが追っているスパングルド団のやり方だというのだ

 

ロンドンでの約束通り、ボンドとティファニー・ケイスはアメリカで食事をし

次のターゲットであるサラトガの競馬場に向かった

フェリックス・ライターは「はにかみ」の騎手であるティンガリング・ベルにコンタクトし

金を握らせ、進路妨害の反則負けに「はにかみ」がなるように促した

さりげなくやればギャングにも気づかれず、ティンガリング・ベルにとってこれはおいしい話である

この地点で入れ替わった「はにかみ」は速かったが、反則負けになる運命になったのだ

 

上手いこと反則負けになったティンガリング・ベルは日課であるアクメ硫黄泥浴場に向かった

ボンドもそこに向かいライターから彼への残りの報酬を渡すつもりであった

だが、黒覆面をかぶり拳銃を手にした二人組が現れ、高熱の泥をベルの箱に注ぎ

全身高熱の泥の中に沈んでいったのである

見え透いた芝居は組織には一切通じないのであった

なんとか一命は取りとめた騎手であったが、大やけどを負い

黒覆面の指にいぼを見かけたボンドがライターに聞くと

そいつはウィントという組織の殺し屋であることが判明した

 

「はにかみ」が反則になったことで、ダイヤ密輸の報酬が入らなかった件を日かげのトリーに話すと

次はラスベガスのティアーラホテルに向かい

指定の時間に指定されたテーブルでブラックジャックで5連続賭けろと言った

これでボンドには間違いなく五千ドルが手に入るというのだ

 

ラスベガスに到着すると、アーニー・クレオという運転手がお待ちかねで

彼はライターがボンドのために用意してくれた土地をよく知る探偵社の人間であった

言われた時間にカジノに向かい、ティアーラカジノの指定されたテーブルのディーラーはティファニー・ケイスであった

彼女のトランプ捌きには巧妙ないかさまがなされており、ボンドは無事五連勝で五千ドルを手にしたのだ

日かげのトリーにはそれ以上何もするなと言われていたが

ボンドはさらにルーレットで肝の据わった勝負で勝利をおさめ、クレオの車に乗り込んだ

 

シボレーとジャガーの尾行に気付いたクレオは二台に宣戦布告し、シボレーを炎上させた

だがアーニー・クレオにも弾は当たり出血している

通りのドライブ・イン劇場に車ごと隠れようとする二人であったが

結局見つかってしまいクレオは拳銃で殴られ、ボンドはジャガーにて連れ去られてしまったのである

 

赤いジャガーはセラフィモ・スパングが統治する西部劇のような街スペクターヴィルに着いた

これに乗っていたマクゴニグルとフラッソの隙を見て、やっつけたボンドの前に

セラフィモ・スパング、ティファニー・ケイス、組織の殺し屋の黒覆面二人が現れた

ボンドはカジノでの賭けの正当性とスパングが尾行を付けたことを訴えると

問題はそこではなく、ロンドンで本物のピーター・フランクスの存在を発見したことにあった

今スパングの目の前にいるダイヤの密輸人はいったい誰なんだということである

口を割らないボンドにはウィント&キッドの編上靴による蹴りの拷問が続いたのであった

 

プラットフォームの待合室でボンドを起こしたのはティファニーであった

連中は散々蹴りまくった挙句、眠りに戻ったというのだ

ボンドとティファニーはプラットフォームにガソリンで火を付け、保線用のハンドカーに乗り込んだ

火を噴くスペクターヴィルを背に二人は逃げたが、連中もキャノンボールという機関車で追ってくる

このままでは追いつかれてしまうが、ボンドは線路にある転轍器を切り替え

キャノンボールは支線に突入し、鉱山に向かった後に衝突し爆発したのであった

 

スパングルド団のアメリカ側であるセラフィモ・スパングを倒したボンドとティファニーは

フェリックス・ライターが手配したクイーン・エリザベス号での船旅でロンドンに戻っていた

船内でボンドが受け取った電報にはルーファス・B・セイのフランス語のイニシャルがABCとなることから

彼がABCである可能性は高く、その手下がティファニーの命を狙い同じ船に乗船しているというのである

シーツを頼りに船の外壁をつたって真下のティファニーの部屋に侵入したボンドは

組織の殺し屋であるウィントとキッドが彼女を拘束しているのを見つけた

この二人をカードで喧嘩して撃ち合ったように見せかけ

殺したボンドはティファニーとの船旅を無事に終わらせたのであった

 

アフリカのとある三つの国境沿いで密輸ダイヤを手にした歯医者はヘリコプターを待っていた

だがそこに乗っていたのはいつもと違う人間であり、ABCと名乗った

どうやらこのルートを消すため、関与したものすべてを片付けるつもりであり

ダイヤモンドを奪ったABCはその歯医者を撃ち殺しヘリコプターで飛び立った

だが隠れていたトラックからボンドは弾丸を発射し、ヘリは見事に落下炎上したのであった

こうしてスパングルド団のダイヤモンド密輸の黒幕であるABCことジャック・スパングも息絶えて

ジェームズ・ボンドのダイヤモンド密輸壊滅作戦は成功したのであった

 

 

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