「007は二度死ぬ」~小説版


概要

イアンフレミングによる「007は二度死ぬ」はシリーズ第12作目で1964年に執筆されている

映画と同様、日本が舞台となっておりブロフェルドとの対決ものではあるが

植物学者になりすましたブロフェルドが

猛毒を持つ植物で囲まれた城で自殺者を誘い込むという内容になっている

ジェームズ・ボンドとタイガー田中のやりとりが日本人の古来から持つ精神論を含んでおり

日本人が読むと結構面白い一作である

因みにボンドガールはキッシー鈴木ただ一人となっている

 

登場人物

タイガー田中

日本の公安調査庁の責任者でその存在は公にはなっていない

柔道の黒帯を持ち、オックスフォード大学の学位を持ち

戦時中日本に貢献し神風特攻隊に志願したという過去を持つ

日本は優れた暗号解読技術を持つといい

ボンドはマジック44という装置を手に入れるようMに日本に向かうよう言われたのである

 

キッシー鈴木

島の海女さんであるが、かつてハリウッド映画に出演した過去を持つ美人である

ブロフェルドが占拠する城の近くにあるこの島でボンドは日本人に成りきり

ボンドとともに生活をする彼女は徐々に彼にのめり込んでいくのであった

 

ディッコ・ヘンダーソン

日本で長く活動するオーストラリアの外交官である

ボンドは日本でまずこの男に会い、日本の文化や礼節を教わるのであった

 

ガントラム・シャターハント博士

スイスのパスポートを持ち、九州にある古城を拠点に熱帯植物の研究をする

付近は火山の間欠泉等あり、植物も毒性を持つものが多いため自殺の名所になってしまう

福岡県警によると黒龍会というやくざの人間を使用しており

疑惑が多いためタイガー田中はボンドに博士殺害命令を出したのであった

その引き換えにはMの欲していたマジック44を差し出すというのである

 

ストーリー(ネタバレ有り)

Mはサー・ジェームズ・モロニーという精神科医と会っていた

結婚直後に嫁を殺されてしまった007ことジェームズ・ボンドのことで話があったのだ

実際トレイシー死後、彼は酒に溺れ仕事もうわの空であった

Mは限りなく不可能に近く、それでいて大事な任務をボンドに与え活を入れることにしたのだ

そしてMはボンドを呼び出し、日本に向かいマジック44という暗号解読機を手にするよう

公安調査庁のトップであるタイガー田中と会う任務を与えたのであった

 

日本に到着するとまずオーストラリア外交官のディッコ・ヘンダーソンという大男に会い

翌日、タイガー田中と会う予定を彼はすでに取り繕っているようだ

完成前の地下鉄のプラットフォームにてタイガー田中とボンドは会い

早速ボンドはマジック44の話を切り出したが

その日はその解読機で入手したソ連の核実験の情報をボンドに伝えるだけで終了した

 

そこからタイガー田中とボンドの親交は深まっていき

マカオのブルー・ルートという情報を持ち掛けるが、すでにそれもタイガーは知っているようだ

だが、ついにマジック44の代わりの条件がタイガー田中の口からこぼれたのである

ガントラム・シャターハント博士と名乗る男が福岡の古城を買い取り

そこで毒性のある熱帯植物を研究目的で育てているらしいのだ

そして、そこに従事するのは黒龍会というやくざであり、いつしかそこは自殺の名所になったようである

タイガー田中はこの博士の「死の収集」を食い止めるべく、城の主を殺害するよう依頼し

その交換条件としてマジック44の名前を出したのであった

 

まずタイガー田中はボンドの外見を日本人に見せるため、とある蒸し風呂屋へ向かった

そこでボンドはマリコという女性に身をゆだねると染料で髪は黒くなっており

いかにも日本人という風貌に髪もカットされていたのであった

それから二人は急行列車で蒲郡に向かい、水中翼船で伊勢湾を渡り鳥羽に向かった

途中、ボンドは日本人というのはよく人にぶつかる人種だと思いながらも

実際ボンドの財布はスリに盗まれていた

だが隠密作戦中である彼らは事を大きく出来ないため、その事件は忘れることにした

 

日本最大の神道の神殿である伊勢の外宮にお参りをし

次に向かった先は京都近辺の山の中にある秘密訓練施設であった

古い城の中に中央登山学校との名を付け、その昔日本に根付いた忍術を教えているようである

今回の任務は証拠となる銃器等を使わずに、この忍術による暗殺をタイガーは薦めたのだ

 

翌日、二人は大阪に向かい「むらさき丸」という定期船で瀬戸内海を渡り九州へ向かった

別府ではシャターハント博士の庭園にもあるという間欠泉を見物し

福岡に到着する最後の晩に、タイガー田中は日本のご馳走であるふぐ料理屋を披露した

ここでボンドは急行列車で財布を掏った人物を見かけて、尾行の可能性を感じたのであった

今回の任務もやはり一筋縄ではいかないであろうと

 

福岡県警の車の迎えで捜査本部に向かう途中、バイクの尾行にボンドは気付いた

脇にそれて捕まえようとするが拳銃を持っており、巡査部長がそれにナイフで応戦した

尾行は刺され死亡し、その入れ墨から黒龍会というやくざの構成員であることが判明した

タイガー田中はシャターハント博士がただの学者でなく

諜報活動にも通ずる大物であると考えを改め、ボンドにその認識の甘さを謝罪したのであった

 

捜査本部に着くと捜査課長の安藤警視は「死の城」の航空写真を広げ、任務の打ち合わせになった

城は石垣で厳重に覆われており、比較的石垣が低い海側から乗り込むのが無難なようだ

近場の海女の住む黒島というのがあり、課長の遠い親族がいるということで

その島を拠点に海を泳いで城に潜入することになった

博士の写真を見せてもらうと鎖帷子のような鎧と兜で武装しており

その顔写真を見たボンドは驚きを隠せなかったのである

なんとそれはボンドの妻トレーシーを殺害したブロフェルドであり、妻であるイルマ・ブントも映っていたのだ

もうこうなれば日本もマジック44もどうでもよくなり

ジェームズ・ボンドの妻の敵討ちという個人的復讐に任務は急変したのであった

 

黒島でまず神主さんに会い、ボンドは轟太郎という名前でキッシー鈴木の元に世話になることになった

一応、日本の海女さんの生態を調査しに来た人類学者という名目であった

彼女は島の海女さんであり、ボンドはその手伝いをして健康的な日々が続いた

ボンドが海の向こうの城についてキッシーに尋ねると、そこには死の王が住んでおり

島にある六地蔵が海の向こうからその死の王を退治しに一人の男を呼ぶという伝説があると言った

そしてボンドはまさにその死の王を退治しに来たと本当の目的を打ち明けると

キッシー鈴木もその城の近くまで一緒に向かうと誓ったのであった

 

毒性植物が育つ敷地に侵入したボンドは早速自殺志願者が池に落ちるところを発見した

そこは熱帯の肉食魚であるピラニアが生息しており、池はすぐに血まみれになってしまった

黒龍会の用心棒が警備をしており、取りあえずボンドは拠点になりそうな小屋を発見し

周囲の様子を窺うことにした

城内に続きそうな扉を発見し、内部へはこのルートが一番安全そうである

南京錠を壊し、ブロフェルドを探すボンドは途中落とし穴という罠に引っかかってしまい意識を失った

 

目覚めると眼前には宿敵ブロフェルドとその妻であるイルマがいた

タイガー田中に言われたように耳の不自由な日本の炭鉱夫に成りきるが

妻イルマがその姿を見て、かつてスイスで対決した007ことジェームズ・ボンドであることに気付いたのだ

そこでブロフェルドは本当に耳が聞こえてないのか試すことにした

15分おきに高熱の間欠泉が噴射する真上の部屋にボンドを連れて、その事実を説明した

時間となり恐るべき間欠泉をかわしたボンドは自分からその素性を明かし

因縁の対決への口火を切ったのであった

 

まず手ごろな棒を手に入れ助手であり妻のイルマを突き飛ばし

日本刀を振り回すブロフェルドに立ち向かう

日本刀は脅威であったが、最後は素手での格闘になりボンドはブロフェルドを締め上げることに成功したのだ

そしてこの地を完全に終わらせるため、間欠泉のバルブを完全に締めきった

以前別府で見物した際、こうすると確か大爆発が起きると聞いていたのだ

 

ボンドは城に付けられた警告用の気球でこの場を脱出することにした

そのロープを外すと上空に舞い上がり、見下ろすと城は大爆発で予想どうりである

だが最後に放たれた銃弾が頭をかすめ、気球を貫きボンドはそのまま海に投げ出されたのであった

 

そのまま行方不明になったボンドの死亡記事がロンドンで発表された

だが実は海に落下したボンドを救い出したキッシー鈴木の元にいたのであった

ボンドは頭に負った傷の後遺症で記憶喪失になり

彼を手放したくないキッシー鈴木が生存を知らないふりをして匿っていたのである

こうして知らぬが仏というように二人は漁に出たりと幸せな生活を過ごしたが

ある日、見かけたソ連という単語にボンドは引っかかり、ウラジオストクに向かうことを決意したのであった

 

 

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