007「カジノロワイヤル」~小説版


概要

小説版007「カジノ・ロワイヤル」はイアンフレミングの007シリーズの第一作目であり

1953年に世に飛び出すことになった

言ってしまえばこれがかの有名な007ジェームズ・ボンドの誕生であり

イアンフレミング自身もこの「カジノ・ロワイヤル」を執筆したときは

英国諜報部員007がこんなにも多様なイメージで世界中に広まるとは思ってもいなかったであろう

実際、伝言ゲームではないがこの小説に登場する007と

現在イメージされる007は結構異なったものである気がする

 

ダニエル・クレイグやティモシー・ダルトンは比較的原作よりのイメージに近づけた感はあるが

ロジャー・ムーアの007なんかは全く原作とは別物な感じは否めない(個人的に好きなボンドではあるが)

実際、初めて映画された時の「ドクター・ノオ」のショーンコネリーを見たイアンフレミングは

「誰だあいつは」

と言っただか言わなかったほどイメージが違っていたという

 

この「カジノ・ロワイヤル」は1954年にアメリカのテレビドラマで映像化され

1967年には本家イオンプロ以外でパロディ版として映画化され

権利関係で2006年にダニエル・クレイグ主演で本家イオンプロから映画公開されたという歴史がある

 

 

登場人物

ル・シッフル

ソ連から西側陣営に送り込まれた工作員であり、別名「ザ・ナンバー」

「アルザス労働者連合組合」地下会計責任者という肩書で活動している

「黄色いリボン」と呼ばれる売春宿に組織の金で投資したが、フランス側がその取り締まりを強化したため

組織の金を失うことになった

その損失を埋め合わせるためロワイヤル・レゾーにあるカジノでバカラの勝負をするというのだ

Mはジェームズ・ボンドにこの勝負に勝利し、組織にダメージを与えるように指示したのである

数字にめっぽう強くカードゲームを得意とするが

映画版のような若干病弱なイメージはこの原作では感じられない

 

フェリックス・ライター

CIA(米中央情報局)の職員である

シリーズ中度々登場しボンドをサポートしている

言ってしまえばこの「カジノ・ロワイヤル」でル・シッフルはCIAからも目をつけられていたのである

バカラ勝負で一度文無しになりかけた007に資金提供をすることで窮地から救い出している

 

ルネ・マティス

フランス参謀本部第二課長という役職でジェームズ・ボンドをサポートする

この「カジノ・ロワイヤル」ではフェリックス・ライターよりこちらの方が出番は多いともいえる

ル・シッフルもボンドの存在には気付いており、相手もそれなりの手を打っていると忠告する

 

ヴェスパー・リンド

映画版では財務省から資金面でボンドに接触するが

原作ではボンドと同じく秘密情報部からボンドをサポートしている

ボンドは基本的に仕事においては女は邪魔になるだけで、たまに欲望のときだけ関わればよいと

現在だったら強烈な男尊女卑な考えの持ち主であるが

徐々にこのヴェスパー・リンドとはその考えが曲がるほど親密になっていくのである

 

 

ストーリー(ネタバレ有り)

「黄色いリボン」と呼ばれる売春宿グループに投資し損失を出した

ル・シッフルはロワイヤル・レゾーで行われるというカジノでその損失を取り戻そうとしていたのだ

資金元はソ連を筆頭とする東側陣営であり

その損失によりスメルシュというスパイ処刑機関に暗殺される可能性もあるためル・シッフルも必死なのだ

 

秘密情報部長官Mは組織の中でもカードの腕に定評のある007ことジェームズ・ボンドに

このル・シッフルを打ち負かすよう命令したのだ

シッフルを暗殺してしまっても良いが、それじゃあ面白くない

カードで勝てばスメルシュが勝手にシッフルを暗殺してくれるだろうし

またフランスで英国の脅威になるであろう「労働者連合組合」にもその名を貶め、打撃を与えられるからである

 

Mはボンドにフランス参謀本部第二課長のルネ・マティス

さらに秘密情報部からはヴェスパー・リンドという女性をサポートとして手配してくれた

さらにCIAからの応援もあるようである

 

ロワイヤル・レゾーでマティスに会うと、どうやら相手もボンドの存在に気付いているらしく

宿泊先の階上に滞在中の夫妻もシッフルの一味であり、ボンドに探りを入れているようである

そんな中、外を歩くボンドの目の前で爆発があり危機一髪の状況に陥ってしまう

カメラに見立てた爆弾でボンドを殺害しようとしたらしいが

手違いでその二人組はボンドの目の前で自爆してしまったのである

 

これでボンドもカード勝負以外でも気は抜けないと再認識するも

そのカードでの大勝負の時は来たのであった

カードはバカラでの勝負となり腕や駆け引きはあるものの、どちらかと言えば五分の勝負に近いという

まあそれもいかさまが無ければの話である

その辺のいかさまはボンドも秘密情報部員としてそれなりの知識は持ってはいるので

なにかあれば彼もまたそれを逆手に取って対処していくであろう

 

序盤調子良く勝ち越すが、シッフルもその辺の修羅場はくぐっているため表情一つ変えることもない

しかし徐々に上がる掛け率の中、ボンドは大敗を喫して無一文寸前まで追い込まれてしまった

ここで給仕がふと現れ、ボンドにずっしりとした封筒を預けたのである

中には大量の札束があり、紙切れに

「マーシャル援助物質、アメリカ合衆国よりよろしく」

と書いてあり、ボンドと目があったCIAのフェリックス・ライターがにやにやしていたのだ

 

これが最後のチャンスとばかりに周りも振り向く一大勝負をシッフルと交わそうとするが

ボンドの背後にはル・シッフルの護衛と思われる二人のうちの一人が立っていた

そしてステッキに見せかけた消音式銃を突き付け勝負から降りるよう脅したのであった

周りからは気付かれない狡猾なやり方ではあったが

ボンドは椅子ごと大きく倒れ出し、このピンチを切り抜けたのであった

そして最後の大勝負に勝利し、ル・シッフルの元手を奪い取り無事にMからの任務を成功させたのだ

と見えたがまだ話はそんな単純では無かったのである

 

シッフルから巻き上げた大金を小切手にして安全な場所に隠し、ヴェスパーと勝利の乾杯をし

ボンドは何故かこのヴェスパーに居心地の良さを感じ、彼女も同じように思っていた

その後、彼女はマティスにメモで呼び出され、入り口のホールに向かっていった

メモで呼び出すというのがマティスらしくないと違和感を感じたボンドは追いかけたが

やはりこれはシッフルの罠であり、彼女はすでに車で拉致されていたのであった

「これだから女はいつも邪魔になる、自分は任務上追うだけである」

と自分に言い聞かすボンドであったが、内心本気で彼女を心配しベントレーのプラグを着火させるのであった

 

だが敵の罠に嵌りボンドのベントレーはパンクし衝突し、ル・シッフルに捕まってしまう

相手も金を取り戻さないと命が危険な状態のため必死なのだ

「夜遊び荘」というアジトにヴェスパー諸共拉致されて、急所攻めという拷問にあうボンドであったが

スメルシュの刺客が資金損失でシッフルとその部下を殺害したため

ボンドとヴェスパーはたまたま助かったのであった

スメルシュの刺客はボンドとヴェスパーは殺すよう言われて無かったが

ボンドはこれから目立った行動が出来なくなるように、手の甲にスメルシュの刻印が刻まれてしまったのである

 

その後、ボンドは入院することになるがヴェスパーが毎日のように見舞いに来てくれた

ボンドはこれに今まで女性に感じたことの無い居心地の良さを感じたし、彼女も同じであったであろう

退院すると二人はきれいな海の見える旅館に滞在し、その愛を深めることになった

だがボンドは彼女の心のどこかにぽっかり穴があることに気付いていたし

また何かに怯えているようにも見えたのだ

 

何日か経つと彼女のその不安定さが目立つようになり、関係がぎくしゃくすることもあった

ある朝ボンドが旅館の亭主に起こされると大事件が起きていたのである

なんとヴェスパーが睡眠薬の多量摂取で死亡しており、ボンド宛には手紙が残されていた

 

彼女は前の彼氏がソ連側に捕まったポーランド人であり、それをネタに脅され

秘密情報部にいながらソ連に密告する二重スパイとして活動せざるを得なかったのだ

今回ロワイヤル・レゾーでボンドの存在が知られていたのと

ル・シッフルに捕まっても何もされなかったのは、彼女が二重スパイであったからだというのだ

だがボンドに寄せた気持ちは本物であったことだけは伝え

スメルシュの追っ手がもう近くを詮索し、ボンドにまで被害が及ぶことで悩んだ挙句の結果であった、、、

 

ジェームズ・ボンドはスメルシュに対する怒りとやるせなさを心に

ロンドンの本部に事件の詳細を事務的に語るのであった

 

 

 

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