007「リビング・デイライツ」~小説版


概要

007「リビング・デイライツ」はイアンフレミングの短編集「オクトパシー」に収録されており

邦題は「ベルリン脱出」となっている

映画「リビング・デイライツ」の元になっている緊張感ある一作である

映画版の序盤が集約されている感じではあるが、若干展開は違うものとなっている

イアンフレミングの創作したジェームズ・ボンドという生きざまが集約された短編である

ティモシー・ダルトンのジェームズ・ボンドはこの裏方での狙撃という緊張感の中で

イアンフレミングの考える仕事に対する粋な心意気をかなり忠実に再現していると思う

 

登場人物

272

東側諸国に潜入し、原子力やミサイル等の情報を掴み西側に今まさに脱出しようとしているスパイである

ここ3日以内に東ベルリンから西ベルリンに午後6時から7時に向かうという情報は入手しているのだが

その情報は東側にも抜けており、272はおそらくその場で命を狙われるであろう

今回のMのジェームズ・ボンドへの指令はこの272を無事亡命させ、この狙撃者を暗殺せよとのことである

 

トリガー

ロシア語で引き金を意味する狙撃者の暗号名である

今回この272暗殺に関わり、恐らく長距離の狙撃になると思われるが

その腕が一流であることは間違いないであろう

 

ポール・センダー大尉

秘密情報部西ベルリン支局でボンドをお待ちかねしていたのがこのセンダー大尉である

ボンドの第一印象は

「ウィンチェスターで詰め込み主義で愛に飢え、戦争では幕僚の仕事で念入りに勤め上げ

保安の面で間違いないが、一目見て消沈していた気持ちがさらに消沈した」

とあるお堅い役人タイプである

トリガー狙撃に当たるボンドのベルリンでの責任者を担当する

 

あらすじ(ネタバレ有り)

コードネーム272と呼ばれるスパイが東側諸国から様々な情報を入手し戻ってくるという

その舞台は東西に分割してしまったベルリンであり

ここ3日中の午後6時から7時の間に西側に向かうというのだ

Mは007にそのように語った

だが問題は272がその脱出を語った相手が実は二重スパイであり

そのベルリンでの脱出計画は東側陣営に筒抜けだったのである

Mはその272の脱出を阻む狙撃手がトリガーと呼ばれていることまでは掴み

トリガーを暗殺し、無事に272が西ベルリンにたどり着けるようジェームズ・ボンドに指令を出すのであった

 

秘密情報部西ベルリン支局ではポール・センダー大尉が007を迎え入れ

事務的に272の脱出ルートや東ベルリンのトリガーの狙撃ポイント等を説明した

トリガーは恐らく向かいの東ベルリンの10階建ての政庁から射撃するだろうという話である

 

初日の午後6時通りと政庁を監視するボンドは交響楽団がその問題の政庁に入っていくところを目にし

そこの一人の女流チェリストに釘付けになってしまった

基本独身主義で女性は仕事の邪魔になると考えているボンドがまさかの一目ぼれであった

センダー大尉が言うには建物に文化部があり、そこでよく演奏をしているらしいのだ

初日と二日目はその楽団以外は特に変わったことは起きずに過ぎたのであった

 

最終日、272が狙撃されるかトリガーが暗殺されるかのどちらかが決定する一日である

そして6時を過ぎ、草むらがざわめき272がこちらに向かってくる様子であった

向かいの政庁でも動きがあり、ついにそのトリガーがカラシニコフ銃と共に窓から姿を現したのである

なんとその姿はこの三日間、暗殺という恐るべき緊張の間に

ボンドに束の間の恋のロマンスを与えたあの女流チェリストだったのである

 

ボンドの弾丸はそのカラシニコフ銃に当たりチェリストの左腕に当たったが命だけは奪えなかった

無事に272は西ベルリンに脱出できたが、センダー大尉は007に詰め寄った

「君がトリガーをわざと殺さなっかったことは問題として報告させてもらう

相手が女だろうが惚れていようが、そうする指令が下されていたのだ」

するとボンドは

「いいよ、私が仮にダブルオーの肩書を失っても

これから彼女がKGBに戻っての仕打ちを考えれば、二度とこんなことは出来ないだろうし

私の考えではこれで充分だと思うんだがね」

と強いウィスキーを一口飲むのであった

 
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